今週、福岡は梅雨入りし、いよいよ本格的な雨の季節がやって来た。例年、福岡を代表する祭り「博多祇園山笠」が終わる頃、福岡は梅雨明けするので、これから1カ月は鬱陶しい日を過ごすことになる。梅雨の間、窓を開けて寝ると雨が降り込んでくるので、ひんやり素材の抱き枕を抱いて眠っている。鬱陶しいな~。
ところでお袋は近頃、物忘れが酷く認知症が進んでいるようで、お袋のかかりつけの整形外科に相談し、メンタルクリニック(心療内科)を紹介してもらったので、お袋を連れて出掛けた。僕は初めてメンタルクリニックに入ったが、落ち着いた待合室で穏やかな音楽が流れている。診察室に入ると、威圧感を与えないためだろうか、白衣ではなくカジュアルジャケット姿の先生が優しく対応してくれた。
「こんにちは。今日はどうされましたか?」
「実は母の物忘れが酷く、認知症が進行している様で診てもらいに来ました」
僕がそう答えると、認知症と言われることにムッとしたお袋が言葉を挟む。
「歳を取れば、誰でも頭はおかしくなると!あんたもこうなるよ!」
先生は笑いながらお袋に言った。
「そうですよ。認知症は老化現象なんで、皆、歳を取ると物忘れをするようになります。それでは少しテストをしてみましょう」
そう言って、先生はお袋に質問を始めた。
1.「お歳はいくつですか?」
2.「今日は何年何月何日で、何曜日ですか? 」
3.「 私たちが今いるここはどこですか?」
4.「これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚
えておいてください。桜、猫、電車」
5.「計算です。100から7を引くと?それからまた 7 を引くと?」
6.「私がこれから言う数字を逆から言ってください。「6」、「8」、「2」
7.「先ほど覚えてもらった言葉(4)をもう一度言ってみてください。
8.「これから5つの絵を見せます。「時計」、「鍵」、「タバコ」、「ペン」、「硬貨」…。それでは隠したの
で、何があったか答えてください。
9.「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」
お袋は頭を傾げながら答えていた。側にいた僕も2問ほど躓きそうになった。(ヤバいな…)質問が終わり、先生がテストの結果を採点した。
「このテストは30 点満点で、お母さんは18 点だったので、軽度から中度の認知症の疑いがあります。いずれにしてもお薬は必要ないでしょう。とにかく規則正しい生活で、できるだけ刺激的な生活を送って下さい」
「高齢者の刺激的な生活…?」
翌日、お袋を車椅子に乗せ刺激を与えるため百貨店で買物に付き合い、今週は見頃の紫陽花を見物に筥崎宮に連れて行った。刺激的だったのか、お袋は喜んでいた。
「刺激的な生活か、疲れるな…」
先週のブログ更新で600回になる。毎週、更新しているのでブログを始めて12年、生まれて小学校を卒業する年月が過ぎた。時間が経つのは早いな…。そもそも「ブログ」とは「Web」と「Log」を繋げた略語で、インターネット上に公開された日記や記事を指す。将来、当時の自分が過去に何を考えていたのか、自身で読み返すためにブログを続けている。当面の間はブログを続けよう。
ところで以前も紹介したが、本多静六という人物をご存じだろうか?彼は明治、大正、昭和にかけて林学博士として東京大学で教鞭を執る傍ら、造園家として活躍した人物だ。彼は「日本の公園の父」と呼ばれ、明治神宮、日比谷公園など全国の公園設計に携わり、福岡の中心部にある大濠公園も手掛けている。また彼は東京大学の教授でありながら、巨万の富を築いた人物としても知られ、僕は投資を勉強する中で彼を知った。
彼は貧しい農家の出身で、苦学の末、東京山林学校(のちの東京農科大学、現在の東大農学部)に入学し、一度は落第するも猛勉強して首席で卒業している。その後、彼はドイツに留学しミュンヘン大学で国家経済学博士号を修得。25歳で帰国し東京農科大学の助教授となり、後に教授に昇任している。研究生活のかたわら植林・造園・産業振興など多方面で活躍するだけでなく、独自の蓄財投資法と生活哲学を実践し莫大な財産を築いた。彼は定年退官を期に全財産を匿名で寄付し、戦中戦後を通じて働学併進の簡素生活を続け370冊余りの著作を残している。彼の著書である「私の財産告白」には彼がどのように財産を築いたのか記されている。
彼は幼少時代から貧しく、留学先のドイツから帰国すると東京農科大学の助教授になったが9人の家族を養っており、当時の彼の収入で9人の家族を養うことは楽ではなかった。そこで彼は貧乏生活から抜け出すため、貧しくても容赦なく月収の4分の1を天引きして貯金にまわし、4分の3の月収で生活した。給料前に現金が底をつき家族が音を上げても、彼は歯をくいしばり甘い感情を一切廃しストイックに貯金を続けたそうだ。
そして貯金がある程度の額に達し軍資金ができると、ドイツ留学時に出会った博士の教えに従い独自のルールで投資を始める。すると爪に火を点す思いで貯めたお金は、転がる雪だるまのように増えていった。後年、彼は貯金、投資の他に出費を抑えることも奨励している。貯金を増やしていくうえで、最も毒になるものは「虚栄心」であると戒めている。
この時期は夏のボーナス払いだけではなく、早くも冬のボーナス払いなどと甘い誘惑が街に溢れている。使うことを考える前に、「虚栄心」を捨て増やすことを考えることも必要だ。
先週、沖縄よりも早く奄美地方が梅雨入りし、福岡でも雨が続いたので梅雨入りすると思ったが、今週の福岡は澄み切った青空が広がり五月晴れで良い天気だった。6月に入ると全国的に梅雨入りし鬱陶しい季節になるが、サラリーマンはこの時期に夏のボーナスが支給されるので心弾む人が多いのではないだろうか。
ところで、日本を代表するある大手企業が今年の冬から賞与を廃止し、「賞与の給与化」に踏み切るという。背景には人手不足で人材獲得競争が激化し初任給を大幅に引き上げ、人件費が増加したことによるものだという。「賞与の給与化」は企業と従業員にどのようなメリットとデメリットがあるのだろうか。
まず企業のメリットは求人票に記載される月給額が高くなるので、人材獲得を有利に進めることができ、従業員の転職に歯止めを掛けることに繋がる。従業員のメリットでは月給が増えるので、生活が安定し将来設計が立てやすくなる。逆に企業のデメリットは業績に合わせて調整可能な賞与が廃止され賞与が月給に振り分けられて固定化するので、業績が悪くても賞与での調整ができず、持続的に賃上げを行わなければならない。従業員のデメリットは月給をはるかに上回っていた賞与がなくなることで、高揚感とやる気が失われてしまうことに繋がる。またボーナス払いでローンを組んでいた人は支払いが複雑になってしまう。
このように「賞与の給与化」は企業と従業員どちらにもメリットとデメリットはあるが、この流れは日本企業で広がり、いずれアメリカのように個人の能力に合わせた完全年俸制になるのではないだろうか。新入社員で入社すると数年間は教育期間で、その後はプロスポーツ選手のように能力に合わせて年俸が毎年変動し、優秀で能力の高い社員の年俸は増えるが、能力の低い社員の年俸は減り、いずれ退場しなければならない。
海外でもボーナスはあるようだが、日本ほど総支給額に占める比率が高い国は少ない。日本独自の「ボーナス文化」は転換期を迎えているようだ。
若い頃、ボーナスが出ると気が大きくなり決まって旨いものを食べに出掛け、ボーナスの使い道を考えていた。最後に貰ったボーナスはいつだっただろう。
「ボーナスか…懐かしいな~」