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2025年03月21日

「暑さ寒さも彼岸まで」とよく言うが、春分の日を境に気温は上昇し急に春が訪れた。例年、お彼岸には墓参りに出掛けていたが、今週、肋骨を折って入院していた高齢のお袋が退院し、退院したばかりのお袋を連れての墓参りは難しく、逆にお袋一人を自宅に残すことも心配なので墓参りは見送ることに。

お袋が肋骨を折り入院した当初は、このままボケてしまうか寝たきりになるのではないかと心配していたが、しぶといお袋は無事に退院することができた。お袋の入院していた病院は未だ新型コロナへの感染対策が厳しく、面会は事前予約制で病院1階にある面会場所で20分と制限さていた。

入院当初、お袋は歩くことすらできず面会に出掛けると、お袋は車椅子に乗り看護婦さんに連れられてくる。お袋に入院生活を尋ねると、1日1時間程度のリハビリを受け、その後は時間を持て余しベッドで横になっているという。さらに病院食が口に合わないとこぼすので、気分転換にもなるだろうとお袋を車椅子に乗せ病院近くのレストランに外出して良いか看護婦さんに尋ねると、主治医から外出許可が出ていないので無理だと言われた。そこで退院日はお袋の好物のカニを用意することや、今月末のお袋の誕生日までに退院してご馳走を食べに行こうとお袋に約束した。

その2日後、看護婦さんから連絡があった。

「息子さんですか?」

「はい。何かありました?」

「お母さんの退院日について連絡しました」

「えっ、もう退院ですか?先日、外出許可は出てないと言われたんですが…」

「お母さん、突然動けるようになったんです。痛みも急になくなり、レントゲン検査も良好だったので、先生は退院して問題ないと言っています」

「えっ?急に動けるようになったんですか?」

「はい。急に動けるようになったんです…」

今週、車椅子から歩行機へと移りお袋は無事に退院することができた。退院した日の夕食は約束通りお袋の好物のカニ鍋で退院を祝い、お袋は大喜びだった。来週のお袋の誕生日は馴染みの和食店を予約している。きっとお袋は好物やご馳走につられて急回復したのではないだろうか…。

「本当にお袋は単純で卑しいな~。まっ、無事に退院できたから良かったけど…」

2025年03月14日

先週末を境に、急に暖かくなり日中もエアコンを入れず、夜は毛布一枚で寝ている。マンションの隣の家の庭には早咲きの桜が満開で、そろそろ各地から桜の便りが届くだろう。桜が満開になると、毎年出掛けている室見川沿いの桜並木の土手を愛犬と散歩しよう。

先日の日曜日、以前勤めていた会社の後輩から帰省するので飲みに行かないかと誘われ、20年ぶりに二人で酒を飲んだ。一緒に勤めていた会社が倒産した後、彼は東京で再就職し今では博多弁を忘れてしまったのか、しっかり東京人になっていた。彼は僕に会うなりこう言った。

「ご無沙汰しています。年取りましたね~」

「そりゃ~年取るやろ~。いらん世話や!」

彼も加齢と地球の引力に抗うことができず顔も弛み、当時と比べると随分おっさんになっていた。そして久しぶりの再会で積もる話に花が咲き楽しく酒を飲んだ。

現在、彼はネット関係の会社で働いており、中古のマンションを購入したことや成長した2人の子供のこと、震災時に帰宅難民になり何時間もかけて歩いて自宅に戻ったことなど、彼の話は多岐にわたった。中でも印象に残った話は趣味のキャンプの話で、休みになると冬でも薪ストーブを車に積みひとりでキャンプに出掛けるという。

「お前、冬でも一人でキャンプに行くとや?」

「はい。マンションが2DKなんで4人家族だとかなり狭いんですよ。だから窮屈な生活から解放されるため休みの日は1人でキャンプに出掛けるんです」

「1人で?家族と一緒に行けばいいやん」

「家族はキャンプに行きたくないと言うもんで…」

彼は本格的に道具を揃えてキャンプをしているようで、キャンプ道具で部屋はもっと狭くなってしまうだろうと思った(笑)。

そして昼の12時から飲み始め、2軒目は中洲の川沿いにあるテラスで陽にあたりながら一杯やり、夕方近くに彼と別れた。

勤めていた広告会社が倒産し、一緒に働いていた後輩達は皆それぞれ他の広告会社に再就職した。数年が立った頃、親しいテレビ局の方からこう言われた。

「お前の指導が良かったのか、お前の元部下は皆優秀でしっかりやりよるぜ!」

「そうですか。それは良かったです」

先日一緒に飲んだ後輩も縁もゆかりもない東京で、しっかり根を下ろし逞しく生きているようだ。

2025年03月07日

肋骨を骨折しリハビリを受けるため入院するお袋に美味しい物を食べさせようと、入院前日がひな祭りだったのでちらし寿司の出前を頼んだ。

「病院食は不味いやろうし、今日はひな祭りやけん、ちらし寿司を頼んだばい!」

「はぁ~。明日から病院食やね~」

深くため息をつくお袋に、今月末のお袋の誕生日までに退院して旨いもの食べに行こうと励ました。そう言えば以前、僕も入院して病院食を食べたな~。

20年ほど前、明け方に胸が苦しくなり目が覚めた。どうも息を吸い込む時に胸が痛く苦しい。翌朝、自宅には僕一人だったので歩くこともままならなかったが、胸を抑えて近くの内科クリニックに向かった。

「今日はどうされました?」

「明け方から胸が苦しくて息を吸い込むと胸が痛いんです」

直ぐに心電図とレントゲンの検査を受け先生からこう言われた。

「随分、脈が乱れているので心筋梗塞の可能性があります。私が連絡を入れるので、直ぐに別の循環器科で精密検査を行って下さい。そのまま入院することになると思います」

「えっ!?そのまま入院!?」

「心筋梗塞は早い治療が何よりも大切です。命にかかわるので救急車を呼びましょう!」

「救急車!?先生、せめて着替えだけでも自宅に取りに戻りたいんですが…」

「それではタクシーを呼びましょう!兎に角、急いでください!」

何やら訳も分からず、タクシーで自宅に戻り3日分の着替えを取り、クリニックから紹介された病院に向かうと、玄関には車椅子に手を掛けた看護婦さんが待っていた。

「急ぎましょう。早く車椅子に乗ってください!」

精密検査の結果、僕は心筋梗塞ではなく心膜炎と診断された。心膜炎は心臓を覆う膜にウィルスが侵入し炎症を引き起こしている状態で、さらに悪化すると心臓の筋肉に炎症が広がり心筋炎になるそうだ。先生からは2週間入院し24時間抗生剤を点滴すると言われ、僕はそのまま入院することに。病院では晩酌することもできず、プラスチックの気の利かない器に盛られた冷めた病院食を食べた。

「はぁ~。これが病院食か…旨いものが食べたいな」

しかも部屋は個室が空いていなかったので4人部屋で、夜は同室の患者の鼾でほとんど眠ることはできなかった。退院前日に個室が空き個室に移り1日だけぐっすり眠ることができた。

お袋も個室が空いていなかったので2人部屋に入院している。不幸にもお袋と同室の患者さんはお袋の鼾で眠れないかもしれない(笑)

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