先週までセミの声が聞えない静かな夏だったが、今週に入ると一斉にセミの大合唱が始まった。暑さの影響でセミはいなくなったのかと心配していたが、パートナーを見つけ命を繋ぐため朝から猛暑の中、精一杯鳴いている。意外にも自然の中で暮らす生物は生命力があるのかもしれない。
ところで僕の住むマンションの隣で新築マンションの建設が進んでいる。作業スタッフは皆、ヘルメットを被り脇の下にファンの付いた長袖の空調作業服を着て、連日作業をしている。夕方、汗にまみれの作業スタッフに声を掛けた。
「お疲れ様。そのファンの付いた作業着は涼しいとね?」
「いや~、こう暑いと作業着の中を温風が循環している感じで、無いよりマシって感じですよ。会社の決まりで、熱中症にならんよう作業中は着用しとるんです」
「作業服の中に保冷材が入っとけば涼しいやろうけどね」
「保冷剤を入れる作業服もあるようですけど、うちはまだ…」
福岡では今週に入ると、夏の暑さはギアをさらに上げ、連日35℃を超える猛暑日が連日続いている。炎天下の中で作業をする建設業は慢性的な人手不足で、人材を確保するため一部の会社で「暑さ手当て」を導入しているそうだ。ある建設会社では30℃以上の真夏日は500円、35℃以上の猛暑日には1,000円を「暑さ手当」として支給。また熱中症対策の一環として空調作業服をスタッフ全員に支給し、建設現場には小型の製氷機やスポットクーラーも設置しているそうだ。「暑さ手当て」を支給している建設会社は年々増加し、今では300社を超えるという。
さらに建設現場の負担を減らすため最新技術も導入され、360度カメラで建設現場を数分歩くと、AIが自動で図面のデータに進行状況を記録し、猛暑日は現場監督を休ませる対策をとっている会社もあるそうだ。近い将来、建設業界は猛暑の夏も極寒の冬も一年中AIやロボットが工事をしているのかもしれない。
作業スタッフにこう言って別れた。
「もう少しで作業が終わるけん、帰って風呂に入って冷えたビールが飲めるやん」
「そうですね。毎日、それを楽しみに頑張ってます!」
「それだけ汗かいたら冷たいビールが旨いやろーなー。じゃー頑張って!」
いずれにしても早く暑さが落ち着ついてほしい。秋の訪れを多くの人が待ち望んでいる。
7月15日の早朝、福岡では「博多祇園山笠」のフィナーレを飾る「追い山」が行われ、いよいよ夏本番だ。例年、この時期に福岡は梅雨が明け、早朝からセミの大合唱で目を覚ますが、今年はいつもの夏とは様子が異なりセミの声がいつものように聞えてこない。一体、セミはどこに消えてしまったのだろう。
そもそもセミの幼虫は地中で数年間過ごし、地上に出てくると羽化して成虫になる。成虫のセミにとって夏は短い恋の季節で、パートナーになるメスを誘うため大声で鳴き、地上に出て1カ月ほどで命が尽きる。セミの羽化は成功率が約40%と言われ、悲しいことに残りの60%は羽化に失敗して死んでしまうそうだ。羽化に失敗する主な原因は、体力が必要な羽化の途中で力尽きてしまうことや、羽化の途中に天敵の鳥やクモなどに襲われてしまうためだという。
今年、セミが減った原因はいくつか考えられるようで、セミが羽化するためには地温が18~23℃程度に達することが重要で、今年は急激に暑くなり地温が一気に上がったことで羽化のタイミングを掴み損ねたこと。次にセミは地中で樹木の根から樹液を吸って成長するが、梅雨が短く乾燥した日が続いたことで樹液が減り、羽化に必要なエネルギーや水分をしっかり摂れなかったこと。そして近年続いている夏の猛暑を乗り越えられなかった幼虫が多くいることなどが考えられるそうだ。このまま暑い日が続くと幼虫のまま死んでしまうか、羽化の途中で力尽きてしまうセミが増え、秋になってしまうかもしれない。セミにとって恋の季節である夏にパートナーと出会うことができなければ、数年後の夏も今年のようにセミの鳴き声が聞こえない夏になってしまう。
僕は夏が大嫌いだが、セミの声は夏の訪れを教えてくれる夏の風物詩のひとつで、あの煩い蝉の声が聞こえないとどこか寂しく感じてしまう。季節の風物詩が減ってしまうと、古くから五感で感じていた季節感が減り物足りない。夏は大嫌いだが、いつもの夏であってほしい。
アメリカのトランプ大統領は「気候変動はいかさま」だと言いパリ協定から離脱したが、さらに温暖化が進めば、人間だけではなく地球上の生き物に大きな影響が及んでしまう。今年の夏の暑さは特に地球温暖化が加速していることを実感してしまう暑さだ。
「セミさ~ん、早く地中から出ておいで~」
梅雨が明け、晴天で猛暑の日が続いている。暑さのせいか、日中は蝉の声も聞こえず、夜にベランダに出ても蚊に襲われない。虫も暑さで活動できないのだろう。一体、この猛暑はいつまで続き、本当に秋は訪れるのだろうか?
ところで夏場、愛犬Q次郎が自宅で留守番する時は、熱中症にならないようゲージのあるリビングのエアコンを稼働させ、さらに備えとして、別の部屋のエアコンも稼働させている。どちらのエアコンも室温を26℃に設定し外出するが、先日、外出から戻るとエアコンは稼働していたが、暑さを感じたので室温計を見ると28℃を超えていた。
「暑いな。エアコンの利きが悪いな…」
エアコンにはムーブアイという赤外線センサーが搭載されており、床や壁の温度、それに人の位置を検知し、省エネで効率良く設定した室温に保ってくれる。
「待てよ。ひょっとしてこのセンサーはQ次郎を検知しとらんのかも…」
ネットで調べてみると、“ムーブアイは人の顔や手のように肌の露出した部分で人の体温を検知しているため、ペットなどは熱源を正しく検知できません”と書いてある。そこで取説を読み返してみると、“小さなお子様やペットは熱源を感知できません。その場合はムーブアイの設定を「切る」にして下さい”
「やっぱりな~。いつも外出して戻ってくると、設定した温度より暑いと思いよった。しっかり取説ば読まんといかんな~」
さらに取説を詳しく読むと、知らなかった機能を見つけた。その機能は「停電自動復帰」の設定で、停電が発生し復旧すると停電前の設定で自動に運転を再開する機能で、ブレーカーが落ち停止した際も復旧後に自動で運転を再開することができる。
「ほぉ~。知らんやった。この機能は設定しとかんといかん」
今年、福岡市で2度停電が起き、1度目の停電は復旧に多少時間が掛った。停電が発生した時期はエアコンを使用しない時期だったので問題はなかったが、夏場の電力不足で停電が起きるリスクがある。留守の時、停電でエアコンが止まると、復旧後もエアコンは止まったままだ。
「Q!これからはエアコンがしっかり利いて快適に過ごせるぞ!」
そうQ次郎に話しかけると、Q次郎は喜んでいるようだった。
やはり取説はしっかり読まなければならない。