7月15日の早朝、福岡では「博多祇園山笠」のフィナーレを飾る「追い山」が行われ、いよいよ夏本番だ。例年、この時期に福岡は梅雨が明け、早朝からセミの大合唱で目を覚ますが、今年はいつもの夏とは様子が異なりセミの声がいつものように聞えてこない。一体、セミはどこに消えてしまったのだろう。
そもそもセミの幼虫は地中で数年間過ごし、地上に出てくると羽化して成虫になる。成虫のセミにとって夏は短い恋の季節で、パートナーになるメスを誘うため大声で鳴き、地上に出て1カ月ほどで命が尽きる。セミの羽化は成功率が約40%と言われ、悲しいことに残りの60%は羽化に失敗して死んでしまうそうだ。羽化に失敗する主な原因は、体力が必要な羽化の途中で力尽きてしまうことや、羽化の途中に天敵の鳥やクモなどに襲われてしまうためだという。
今年、セミが減った原因はいくつか考えられるようで、セミが羽化するためには地温が18~23℃程度に達することが重要で、今年は急激に暑くなり地温が一気に上がったことで羽化のタイミングを掴み損ねたこと。次にセミは地中で樹木の根から樹液を吸って成長するが、梅雨が短く乾燥した日が続いたことで樹液が減り、羽化に必要なエネルギーや水分をしっかり摂れなかったこと。そして近年続いている夏の猛暑を乗り越えられなかった幼虫が多くいることなどが考えられるそうだ。このまま暑い日が続くと幼虫のまま死んでしまうか、羽化の途中で力尽きてしまうセミが増え、秋になってしまうかもしれない。セミにとって恋の季節である夏にパートナーと出会うことができなければ、数年後の夏も今年のようにセミの鳴き声が聞こえない夏になってしまう。
僕は夏が大嫌いだが、セミの声は夏の訪れを教えてくれる夏の風物詩のひとつで、あの煩い蝉の声が聞こえないとどこか寂しく感じてしまう。季節の風物詩が減ってしまうと、古くから五感で感じていた季節感が減り物足りない。夏は大嫌いだが、いつもの夏であってほしい。
アメリカのトランプ大統領は「気候変動はいかさま」だと言いパリ協定から離脱したが、さらに温暖化が進めば、人間だけではなく地球上の生き物に大きな影響が及んでしまう。今年の夏の暑さは特に地球温暖化が加速していることを実感してしまう暑さだ。
「セミさ~ん、早く地中から出ておいで~」