若い頃はよくラーメン屋に通っていたが、年を重ねるにつれてあっさりしたものを好むようになり、次第に足が遠のいていった。
年末年始は和食が続いたので、ふと「久しぶりにラーメンが食べたい」と思い、近所で“安さが売り”のラーメン屋へ向かった。
これだけ物価が上がっているので、さすがに値上げしているだろう──そう思いながら店に入った。
店の扉を開けた瞬間、ふわっと豚骨の香りが鼻をくすぐる。
入口横にある食券機で金額を確認すると、表示されていたのは以前と同じ価格で
ラーメン290円。
「えっ!?まだ290円でやってるんだ!」
今ではスーパーやコンビニで売られている高めのインスタントラーメンよりも安い。
この店のラーメンは決して“絶品”というわけではないが、スープはあっさりとシンプルで、麺は昔ながらの細麺。当然チャーシューとネギも乗っている。
さらに、豚骨ラーメンに欠かせない紅しょうが、すりごま、おろしにんにくは入れ放題。
しかも注文してからラーメンが出てくるまでの時間は、わずか1分ほどと早い。
客層は驚くほど幅広い。
食べ盛りの学生から、年金暮らしの高齢者まで、本当にさまざまな人が訪れる。
部活帰りの学生たちは決まって替え玉を頼み、100円の替え玉を追加しても合計390円。
さらに、ラーメンに餃子とライスが付いたラーメン定食は驚きの580円だ。
店の奥では、大きな寸胴にたっぷりの豚骨が入り、スープがぐつぐつと炊かれている。
以前、友人は「あれは豚骨じゃなくて野良猫の骨やないと?だけん安いったい。豚骨じゃなくてニャン骨やな」と冗談を言っていた。
この店は福岡で数店舗を展開しているが、どの店舗でも同じ290円という価格を守り続けている。
今のラーメンの平均価格はいくらなのだろうか。
2025年のデータでは、全国のラーメン平均価格は723円。
10年前と比べると150〜200円ほど値上がりしている。
値上がりの理由は、材料費の高騰、光熱費に物流費、さらに人件費の上昇だ。
こうした要因が重なり、ラーメン業界は“値上げせざるを得ない状況に追い込まれている。
福岡は全国的に見てもラーメンが安い地域だが、それでも700円程度が一般的。
その中で290円は、もはや“昭和の置き土産”のような価格だ。
薄利多売と言えばそれまでだが、それでも290円を守り続けるには理由があるのだろう。
常連客が毎日でも気軽に通えるように、財布に優しい価格にしているのだろう。
店は客の生活を知っており、簡単には値上げできないのかもしれない。
利益よりも、客の日常の暮らしを守ることを選んだこの店。
これからも頑張って価格を維持してほしい。
この日、いつもの290円のラーメンに100円で追加のチャーシューを注文し合計390円。
490円のチャーシュー麺より肉の量は若干少ないが、僕には価格も量もちょうどいい。
帰り道、猫がじっとこちらを見ている。
その目は、何か言いたげだ。
「まさか…お前の仲間たちが…!?」
猫は静かに立ち去った。
……いや、考えるのはやめておこう。








