先週、喉が痛く風邪気味だったので、近所の薬局で風邪薬と栄養剤ドリンクを購入し服用した。しかし風邪は一向に治らず、週末は普段より体が熱く感じたので体温を測ると38.7度もあり、近所のクリニックに出掛けた。クリニックで血液検査と診察を受け、結果は新型コロナやインフルエンザではなく風邪がこじれて急性扁桃炎だと診断された。クリニックで抗生剤と喉の痛みを抑える薬を処方され服用すると、翌日には熱は下がり喉の痛みも治まった。僕は今まで殆ど風邪に掛かったことは無かったが、年齢を重ね免疫力が低下していることを痛感した。
「いつまでも若いと思ったらいかんな…。市販薬を買わんで、病院に行くべきやったな…」
市販されている風邪薬はどれも効果があるような広告表現で、多くの人がキャッチコピーを思い出せるほどそのイメージは脳に刷り込まれている。そのため市販されている風邪薬の市場は2,000億円を超えるという。
風邪は正式には「風邪症候群」と言うそうで、一般的にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、咳、発熱などの症状の総称を指すそうだ。風邪の90%以上は何らかのウイルス感染によるもので、風邪を引き起こすウイルスは200種類以上もあり、同じウイルスでもいくつもの型が存在するためウイルスの種類は未知数だという。またウイルスは幾度となく変異するためウイルスを特定することは難しく、一度感染したウイルスに免疫ができたとしてもさらに変異したウイルスには免疫は無く感染してしまい風邪を引いてしまうそうだ。そして残念なことに今のところ風邪の特効薬はこの世には存在しない。市販の風邪薬はウイルスに有効な成分は入っておらず、それぞれの症状に合わせた対処療法で、辛い症状を緩和し体力の消耗を抑えることができるだけだという。
今回、僕は喉が痛くなり薬局で風邪の引き始めに服用する風邪薬とトローチ、それに栄養ドリンクを2本購入し費用は3,000円ほど掛かった。市販薬を服用し多少喉の痛みは減ったものの1週間後に発熱し、クリニックで診察と処方薬で費用は薬局で支払った金額ほぼ同額の3,000円だった。(もちろんクリニックでの費用は医療保険を利用した金額だが)。
長く広告業界で働いてきたので広告を多少なりとも理解しているが、僕の脳も市販の風邪薬は効くと刷り込まれているようだ。これからは広告に惑わされず体調不良時は病院に行くことにしよう。 「熱、のど、鼻に○○が効く~♪」紛らわしいなぁ…。
季節は穏やかな春なのに、世界の株式市場は大荒れだ。先週、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は2,231ドル急落し、一日の下落幅としては過去3番目の下げ幅で、今週は先週と一変、ダウ平均株価は2.962ドル急騰し過去最大の上げ幅を記録した。これは朝令暮改なトランプ政権による関税への言動によるもので、市場は動揺し大きく揺さぶられている。
ところで過去の大統領就任年の米国株式(NYダウ工業株平均)の騰落率を調べてみると、民主党の大統領が就任した年の平均は+9.0%に対し、共和党の大統領が就任した年の平均は-3.8%で民主党の大統領就任年の方が良い結果になっている。第二次世界大戦以降、民主党の大統領は8回就任しており、就任した年において株価が下落したのは1度だけだ。そして過去に起きたブラックマンデー、ITバブル、リーマンショックの株価暴落は共和党の大統領の就任期間に起きている。この二大政党の政治への取り組み方や政治スタンスはどう違うのだろうか?
民主党の起源は1800年以前にトーマス・ジェファーソンが立ち上げた政党で、トーマス・ジェファーソンはアメリカ独立宣言の起草者の1人で、第3代アメリカ大統領に就任している。民主党はリベラル寄りで、「大きな政府」という考え方を基本としている。「大きな政府」とは高福祉高負担の思想に基づいて政策を行う政府で、高水準の公的サービスを実現するために税などの国民負担が大きくなりやすいのが特徴だ。支援を必要とする人たちに対し社会福祉や生活保護を考えるのが政府の義務だというスタンスで、政府が経済活動に積極的に介入し、社会資本の整備と国民の生活を安定させ、所得格差などを是正する考えに基づいている。
逆に共和党は1854年に奴隷制度に反対する北部の運動の連合体として結党された歴史があり、党出身の初代大統領は「奴隷解放の父」とも呼ばれたエイブラハム・リンカーンだ。民主党は保守寄りで、「小さな政府」という考え方を基本としている。「小さな政府」とは低福祉低負担の思想に基づいて政策を行う政府で、税など国民の負担は少ないが公的サービスの水準も低いことが特徴だ。政府による経済活動への介入を減らし、市場原理による自由競争を促し、経済成長を図るという考えに基づいている。
民主党と共和党を比べると、弱者を守るか、それとも強者を優遇するかのように思えるが、過去の株式市場の数字からは民主党の大統領が好感されているようだ。共和党のトランプ政権はまだ始まったばかりで任期は4年近く残っている。株式市場はこれからも不透明だが、市場のパニックに一喜一憂せず気長に投資をするべきだろう。僕は乱高下しているマーケットを静かに傍観している。
新社会人になり初出社の朝、僕は真新しいスーツを着て遅刻をしないように早めに自宅を出た。当時、僕は期待よりも不安が大きくて、満開だったはずの桜の花は全く目に入らなかった。大学生の頃はバイトや遊びに夢中で、夜中まで友人と酒を飲み毎晩どんちゃん騒ぎの生活だったので、社会人として規則正しい生活ができるか、遅刻せずに出社できるか不安だった。
ところで毎年4月1日に掲載されていた大手飲料メーカーの新聞広告が楽しみだった。その広告は僕の大好きな作家の伊集院静氏が新社会人に向けて語りかけるシリーズ広告で、伊集院静氏が亡くなり昨年の4月1日の掲載が最後になった。昨年、掲載された広告の左にあった但し書きには、この広告は2000年4月に掲載された初回の原稿を再掲載したもので、これで最終回とする旨が記されていた。このシリーズ広告は2024年4月まで25回続き、4半世紀もの間、伊集院静氏は多くの新社会人にエールを送った。ネットで昨年の広告を検索してみると、その原稿を見つけたので紹介しよう。
「空っぽのグラス諸君」
新社会人おめでとう。今日、君はどんな服装をして、どんな職場へ行ったのだろうか。たとえどんな仕事についても、君が汗を掻いてくれることを希望する。冷や汗だってかまわない。君は今、空っぽのグラスと同じなんだ。空の器と言ってもいい。どの器も今は大きさが一緒なのだ。学業優秀などというのは高が知れている。誰だってすぐに覚えられるほど社会の、世の中の、仕事というものは簡単じゃない。要領など覚えなくていい。小器用にこなそうとしなくていい。
それよりももっと、肝心なことがある。それは仕事の心棒に触れることだ。たとえどんな仕事であれ、その仕事が存在する理由がある。資本主義というが、金を儲けることがすべてのものは、仕事なんかじゃない。その心棒に触れ、熱を感じることが大切だ。仕事の汗は、その情熱が出させる。心棒に、肝心に触れるには、いつもベストをつくして、自分が空っぽになってむかうことだ。
それでも諸君、愚痴も出るし、斜めにもなりたくなる。でもそれは口にするな。そんな夕暮れは空っぽのグラスに、語らいの酒を注げばいい。そこで嫌なことを皆吐出し、また明日、空っぽにして出かければいい。案外と酒は話を聞いてくれるものだ。
今週、満開の桜の中、未踏の地に踏み出した多くの新入社員は不安な気持ちで桜を眺めただろう。しかしあまり心配することはない。僕も空っぽのグラスに酒を注ぎ、夜遅くまで酒に話を聞いてもらい何度も寝坊した。意外にも遅刻や失敗をしても、頑張っていれば何とかなるものだ。