台風10号が去り、台風一過で澄みきった青空が広がり、ドライヤーから出るような熱風から多少心地良い風に変わってきた。スーパーの売り場では秋を代表する秋刀魚や栗が並び始め、もうすぐ秋本番だ。
「旨い寿司と松茸の土瓶蒸しが食べたいなぁ~」
ところでもうすぐ新米の季節になるが、スーパーの店頭では米が品薄で、米派の僕にとっては死活問題だ。日本人の米離れは加速し、一人当たりの米の消費量はピークだった1962年の118kgから年々減少し、今では半分以下の年間51kgまで落ち込んでいる。
今年の米不足は昨年の猛暑による不作やインバウンドによる訪日外国人の増加で、米の消費が増えたからだといわれているが、果たして本当なのだろうか?昨年の米の出来具合を示す「作況指数」は平年並みで、決して米が不作だったわけではなく、インバウンドによる消費は米全体の1%にも届かないそうだ。それではなぜ米が不足しているのだろうか?
米が不足している理由は「減反政策」によるもので、米離れにより、従来と同量の米を作れば米が余り価格は下落するので、安定した価格を維持するため政府は米農家が麦や大豆など他の作物に転作すれば、国が補助金を出す制度だ。そのため今では田んぼの約4割が減反され、ピーク時の半分以下に米の生産は抑えられている。しかし2018年にこの「減反政策」は廃止になったが、廃止されたのは田んぼを減らす減反で、今では米の「生産数量目標」を減らすことで補助金を出しているという。当然、ギリギリの生産態勢で米をやり繰りすれば、些細な需要の変動であっという間に品薄になり米の価格は高騰してしまう。
お隣中国では台湾有事をにらみ国内の食料備蓄を増やし、14億人の国民が約1年半食べられるだけの穀物を買い占めているそうだ。一方、日本の穀物備蓄能力は貧弱で、国民が1.5~2カ月食べられるほどしかない。日本政府は有事に備え食糧備蓄をもっと増やし、食糧生産力を高めるべきだ。今の日本の米の生産は700万トンほどだが、全ての田んぼを利用すれば1,400万トンの米を生産できるそうで、国内で米を消費できず余ってしまえば、海外に輸出すればいい。
どうも日本の政府や官僚はリスクヘッジすることができず、グローバルな視点で物事を考えない。もし有事が起これば日本はひとたまりもない。将来、日本で寿司を食べることができなくなり、海外で寿司を食うことになってしまう。
僕は毎年秋に「ふるさと納税」を利用し返礼品で米を頂いているが、今年は「ふるさと納税」の返礼品に米が消え小麦製品になってしまうかもしれない。
「パンと松茸の土瓶蒸しか…、しっくりこないな~」
暑さのピークは過ぎたようで、来週は9月に入り徐々に涼しくなるだろう。煩かった蝉の声は聞こえなくなったが、住んでいるマンションは改修工事中で、日中、「ガガガガガ~!ドンドンドン!カンカンカン!」と工事の音で煩い。改修工事は11月まで続くので、部屋の中では秋を感じられないだろう。「あ~、鬱陶しい~」
昨日の午前中、大型の強い台風が福岡に接近していたので、近くのスーパーに営業時間を問合わせると、その日は13時に閉店し、翌日は終日店を閉めるという。そこで慌ててスーパーに出掛けると、客で混雑しており米とパンそれにカップ麺は既に売り切れていたが、何とか食料品を購入することができた。テレビでは台風による九州南部の被害の様子が流れていたので、自宅のベランダを片付け近づく台風に備えた。しかし幸いにも福岡は台風の進路からそれていたので、雨は降ったがそれほど強い風は吹かず拍子抜けしてしまった。
ところで、この強い台風10号は「サンサン」という名前が付いている。一体、誰が何のために名前を付けているのだろうか?実は台風の名前は日本を含むアジア太平洋地域の14か国が加盟する「台風委員会(Typhoon Committee)」によって付けられている。
「台風委員会?なんだそれ!?」
台風委員会は、台風や熱帯低気圧に関する予防、対策、研究などを目的に設立された国際組織で、地域の防災意識を高めるため参加する14カ国の馴染みのある名前を台風に付けているそうだ。台風の名前は委員会に加盟する14カ国が自国に関連する名前を提案し、各国、それぞれ10の名前が採用されリスト化している。そのため台風の名前リストには加盟国14カ国×10の名前=140もの名前があり、発生した台風はリストの順に名前が付けられ、リストが一巡するとリストの最初に戻る仕組みだ。台風の名前にはいくつかのルールがあり、アルファベット9文字以内、長すぎず発音しやすいこと、他国の言語で感情を害さないものなど、加盟国や地域の文化や自然に敬意を表して選ばれている。日本の気象庁が台風委員会に提案し採用された名前は「コイヌ」、「ヤギ」、「ウサギ」、「カジキ」、「コト」、「クジラ」、「コグマ」、「コンパス」、「トカゲ」、「ヤマネコ」で、全て星座の名前だ。これは自然の事物で大気現象である台風とイメージ上の関連を持つ天空にあり、親しみやすい名前にしたという。
ちなみに今週、日本を襲った台風10号は「サンサン」という名前でリストの18番目に当たり、言葉を提案した国は香港で、「少女の名前」が由来だという。この台風は「少女の名前」というが、勢力の強い台風だったので「ドラえもん」に出てくる「ジャイ子」のような少女なのかもしれない。
マンションの駐車場でひっくり返った蝉の死骸を見つけた。昆虫は死に際、硬直し脚が縮み関節が曲がるため地面で体を支えることができず、ひっくり返って死んでいくそうだ。仰向けになりながら、死を待つ蝉はいったい何を見て何を思うのだろうか。夏の澄み切った青空だろうか…。しかし蝉の目は体の背中側にあり、仰向けになった蝉は空を見ることができず、地面を見ているという。彼らは幼少期に長く過ごした地中での生活を思い出しながら、最期を迎えるのだろうか。何とも命は儚く切ない。
ところでお盆が終わると、住んでいるマンションで大規模改修工事が始まった。僕は過去に2度マンションの改修工事を経験しているので、今回で3度目になる。マンションの改修工事は外壁に足場を組みネットで覆うため、部屋の中は暗く閉塞感に包まれる。
お盆前にマンションの住人を集めて改修工事の説明会が行われた。工事期間中、数台の駐車場に足場を組むので、そこに停めている車は他の駐車場に移動してもらうと説明を受け、僕はその対象者だった。近所に空きの駐車場がなくマンションから徒歩10分ほどの駐車場と、徒歩5分ほどの駐車場の2カ所を確保したので、後日、抽選で決めるという。
抽選の日、僕は工事の施工会社の責任者にこう言った。
「少し乱暴ですよね。うちは高齢の母と同居しており頻繁に病院に送迎しているので、駐車場を移動するのは難しいです。移動する方だけで抽選するのではなく、全員で移動する対象者を決める抽選なら、まだ理解しますが…」
「しかし管理組合で決まったことなんで…」
「移動の対象者に事前にヒアリングしたんですか?少なからず僕はヒアリングされていません。車の移動が難しい人は移動可能な方と代わってもらうとか、2台の駐車場を借りている方の1台を優先して移動してもらうとか、工事期間の前半と後半で移動をローテーションで回すとか…。頭を捻ってアイデアを出して管理組合に提案し、親切に対応するべきじゃないんですか?あなた方プロでしょ?」
「…わかりました。お盆休み明けに管理組合の理事会があるので相談してみます」
結局、その日は抽選が行われず、お盆明けに理事会を終え改修工事の責任者が尋ねて来た。
「理事会に相談し、車の入れ替えやマンションの共用地を上手く利用し、2台借りている人の1台を移動してもらうことで調整が付きました。移動しなくて大丈夫です」
近頃、物事を簡単に考え、頭を捻りアイデアを出す人が減ったように感じる。
改修工事が始まり大好きなベランダで空を見上げて過ごすことができなくなった。ひっくり返った蝉を思い出した。