あと一週間もすると桜が開花するらしい。
街は少しずつ春の色に染まり始めているのに、世界はまったく春を感じさせてくれない。
アメリカのイラン攻撃、イランによるホルムズ海峡の封鎖。
原油価格はぐんぐん上昇し、物価も連動して上がる。
物価が上がれば景気は冷え、株価は下がる。
今週月曜日の東京市場は、株式・為替・債券がそろって売られる“トリプル安”。
日経平均は一時4,200円超下げ、節目の5万2000円を割り込んだ。
まさに“春の嵐”である。
そんな荒れ模様の中、若者たちは驚くほど投資に前向きだ。
「NISA貧乏」という聞き慣れない言葉まで広がっている。
「老後のために今から積み立てないと」
「複利は早く始めた者勝ち!」
そんな言葉が、まるで春の花粉のように飛び交っている。
しかし、その裏側では静かな節約生活が広がっている。
食事はカップラーメン、飲み会は控えめ、古着を求めてリユースショップへ。
旅行は“いつか行こう”と先送り。
未来の自分に仕送りするために、現在の自分が質素倹約を貫いている。
桜の開花予想が発表されても、
「花見? いや、NISAで余裕ないんで…」
と断る若者が増えるかもしれない。
春の陽気より、株価チャートの上下で心が揺れている。
ニュースでは「若者の投資意識が高まっている」と言うけれど、
実態は“未来に仕送りする現在の自分”に苦しむ姿だ。
それでも彼らは積立投資をやめない。
未来の自分を信じているのか、
それとも今の自分を信用していないのか、判断が難しい。
将来のためにNISAなどで先行投資することは大切だ。
だが、今の自分を大切にしないと、楽しい思い出もないまま老後を迎えてしまう。
老後、NISAで多少の余裕ができたとしても、
それまでNISA口座を眺めながらカツカツの生活では本末転倒だ。
それはまるで、
「長い間、満開の桜を待ち続け、気づけば腰は曲がり、桜より先に髪の毛が散っていた」
そんな笑うに笑えない話になってしまう。
遅咲きの桜も美しいが、咲いた頃には楽しむ時間も元気も残っていないかもしれない。
桜が散るのは自然の流れとして、
せめて若者たちのNISA口座だけは散らないように、春風にそっと祈りたくなる。
未来の花を育てながら、今の自分もちゃんと咲かせてほしい。







